フレイルになる原因とリスク要因について
65歳以上の高齢者の割合が約30%の日本では、健康と要介護の間の段階である「フレイル」という状態が注目されています。
フレイルは、放っておくと要介護へと進展し、健康を損なう可能性がある状態のことです。フレイルの状態から要介護へと進展しないよう予防や対策を取ることで、健康を取り戻し、元気に過ごす期間を伸ばすことができます。
今回は、なぜ「フレイル」を放置してはいけないのか、また、フレイルを進行されるリスク要因とその改善方法についてご紹介します。日々の生活の中で、少しずつ取り組んでみてください。
フレイルはなぜ予防する必要がある?
フレイルは、「虚弱」という意味の言葉で、医学用語では「健康から要介護へ移行する間の、心身が弱ってきている状態」を指します。以下の3種類のフレイルがあり、そのどれもが心身の健康維持に重要です。
①身体的フレイル 筋肉量が減り、体の機能や活動能力が衰えることです。疲れやすさ・持久力のなさから始まり、歩く速度が遅い、バランスを崩しやすいなどを自覚するようになります。
⓶心理的フレイル 心理的フレイルは、精神的に心細さやつらさを感じたり、認知機能が低下したりすることを指します。 高齢になると、加齢に伴う環境の変化が誰にでも訪れます。「会社員・親」などの社会的な役割を手放し、パートナーと死別する方も増えてくるでしょう。そういった変化が次々に訪れることが、精神的に影響してしまうのです。
③社会的フレイル 社会的フレイルは、家族や友人・知人などとのつながりが減って、社会参加や他者交流の強度が弱まっている状態です。
「退職して、趣味も友人もなく、1日中家で何もすることがない」という方は案外多いです。社会的な孤立感によって、心身が衰えてしまいます。
3つのどれか1つでも当てはまる方は、ぜひ、今日からフレイル予防の取り組みを始めましょう。
65歳ごろからフレイルに陥る方が少しずつ出てきて、75〜80歳ごろまでには約20%、85歳には約40%の方がフレイルに該当するようになるそうです。 65歳というと、仕事がひと段落して自分の時間が増えるという時期ではないでしょうか?「これから今まで我慢していたことに取り組んだり、旅行をしたりしよう」と計画される方もいると思いますが、そのためには心身の健康が必要不可欠です。
フレイルから要介護へと進展すると、遠出をすることができなくなったり、日常生活に人のサポートがなければままならないという状態になってしまいます。うつ症状や認知機能低下を生じると、自分らしく楽しく生きて行くことが難しくなることも考えられます。
フレイルを予防することは、自分らしい毎日を送ることにつながるのです。
「もう体力低下を感じているし、フレイルになっているかも」という方も、まだ遅くありません。「まだ若いから、関係ない」と感じるかもしれませんが、健康維持のためには、早くから対策をするに越したことはありません。 ぜひ、家族みんなで、友人を巻き込んで、フレイル予防に取り組んでいきましょう。
フレイルの原因・リスク要因
フレイルを引き起こす要因を3つと、日々できる具体的な改善策をご紹介します。健康を取り戻すため、日々の生活で変えられる部分は変えてみましょう。
①栄養不足
「日本で普通に暮らしているのに、栄養不足なんてあり得ない」このように思っていませんか?
令和元年に厚生労働省がおこなった調査では、「低栄養傾向にある65歳以上の方」の割合は、男性で12.4%、女性では20.7%にも及ぶことがわかりました。BMIが20未満の方は、要介護になるリスクが高いことがわかっています。
BMIが20を下回っていないか、確認してみましょう。また、最も病気になりにくいと言われているのは「BMI = 22」です。
栄養が足りているか、栄養バランスに問題ないかどうかを、チェックしてみましょう。
日本医師会のホームページでは、ご自身の性別・年齢・生活の中での運動レベルに合わせて、適切なエネルギー量(摂取カロリー)を計算できます。
また、ご高齢になると、食事の用意もなかなか大変ですよね。その結果、ご飯とお味噌汁だけ、パンとコーヒーだけ、というような食事になってしまう方も少なくありません。炭水化物(ご飯、パン、麺類)の割合が多くなると、栄養バランスが崩れてしまいます。
冷凍の野菜(ほうれん草、ブロッコリーなど)、缶詰(魚や果物)、宅配のお弁当などを活用して、いろいろな食材をとるようにしてみてください。
②運動不足
運動不足は、筋肉の衰えに直結します。運動が健康によいということは、誰でも頭ではわかっているでしょう。それでも、「疲れやすいから散歩に出るのも億劫」「今更運動なんて始められない」と、二の足を踏んでしまうものです。
運動は、一朝一夕で効果を実感できるものではありません。ですが、ほんの少しずつでも続けることに意味があります。
まずは、ウォーキングをしましょう。散歩に出るのも気が乗らない場合には、家の中で意識的に歩くことから始めるのもよいです。ゴミ箱を少し遠くに設置する、テレビを見ていてCMが入ったらその場で足踏みをする、近くのスーパーまで車を使わず歩いて行くなど、少しのスキマ歩きをしてみてください。
スマートウォッチや歩数計を使えば、ご自身が1日にどのくらい歩いているのかを簡単に確認できます。最終目標は、1日8,000歩(65歳以上は7,000歩)です。まずは、「今よりプラス2,000歩」から目標にして、スキマ歩きを始めましょう。
③社会的な関わりの減少
仕事や子育てが終わり、「人との関わりが急に減ってしまった」「出かける用事が全くない」という方はとても多いです。
人との関わりが極端に減ってしまうと、気持ちがふさぎ、外へ出るのがどんどん億劫になり、体力が低下して…というように、悪循環に陥ってしまいます。
趣味のサークル活動やボランティア活動などに参加してみるのはいかがでしょうか。月に1回以上、人との関わりを楽しむことで、心の健康が維持できるとわかっています。少しハードルが高いと感じられるのであれば、買い物や通院など外出の機会を作るようにしましょう。
番外編:健康診断を受けましょう
何か持病のある方は日頃から通院をしていると思いますが、そうでない方は、最後にいつ健康診断を受けましたか?
気がついていないだけで、高血圧や糖尿病などのご病気があるかもしれません。病気は、早く見つけて早く治療を始めるというのが大切です。
とくに女性は、50歳前後の更年期をすぎると、エストロゲン(女性ホルモン)の減少に伴って高血圧や脂質異常症、骨粗鬆症、糖尿病などあらゆる病気を発症するリスクが高まります。今まで健康に問題がなかったとしても、更年期ごろからはご自身の健康をチェックする機会を持ちましょう。
40〜74歳の方は「特定健康診査」、75歳以上の方は「後期高齢者健康診査」で1年に1度、メタボリックシンドロームの検査をすることができます。費用は無料〜数千円で、自治体によって異なりますので、お住まいの地域で確認してください。
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まとめ
今回は、フレイルを予防するべき理由をお伝えするとともに、フレイルを進行させるリスク要因とその改善策をご紹介しました。
フレイルは、進行すると要介護の状態になり、生活に人のサポートが必要になったり、気持ちがふさいでしまったりと、自分らしい毎日を送るのが難しくなってしまいます。早いうちから対策を取ることで、健康を長く維持することが可能です。
栄養バランスに気をつけ、適度に運動をし、人との関わりを持つようにしましょう。また、健康診断を受けていない方は、この機会に受けてみてはいかがでしょうか?
参考
・日本医師会. 1日に必要なカロリー https://www.med.or.jp/forest/health/eat/01.html ・厚生労働省.健康長寿に向けて必要な取り組みとは?100歳まで元気、そのカギを握るのはフレイル予防だ https://x.gd/OKyWO ・東京都福祉局.フレイルって何歳くらいでなるの? https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kaigo_frailty_yobo/shiru/howold.html ・東京都医師会.フレイル予防 https://www.tokyo.med.or.jp/citizen/frailty
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