生活習慣病と睡眠不足の関係について
現代人は、睡眠不足だといわれています。とくに日本人は世界で最も平均的な睡眠時間が短く、多くの方が自分の睡眠に不満を持っているそうです。
睡眠不足は、疲れやイライラにつながるということを実感している方もいると思いますが、健康にも悪影響を及ぼすことをご存じでしょうか?長く健康で過ごすためには、「適切な睡眠」も大切です。睡眠不足と生活習慣病との関係を解説するとともに、睡眠についての誤解を解消して適切なアプローチができるよう、睡眠のポイントをご紹介します。ぜひ、日々の生活で取り入れてみてください。
睡眠不足と生活習慣病との関係
一見無関係そうに思える睡眠不足と生活習慣病ですが、どのような関係があるでしょうか?
睡眠不足の方はとても多い
令和元年「国民健康・栄養調査」(厚生労働省)によると、男性の37.5%、女性の40.6%で、睡眠時間がたったの6時間未満でした。また、「睡眠全体の質に満足できなかった」人の割合は男性21.6%、女性22.0%にも及び、「日中、眠気を感じた」人も男性32.3%、女性36.9%と、非常に多い結果です。
近年では、睡眠障害も「生活習慣病」に含めようという動きもあるほど、睡眠不足は生活習慣病との関わりが強いことがわかっています。
睡眠不足で健康にどのような影響がある?
睡眠不足による健康への悪影響について、具体的に3つの段階に分けて解説します。
①肥満になる
睡眠不足が続くと、まず、肥満になることがわかっています。「体重が増える」よりは、「内臓脂肪が増える」ということが問題です。睡眠不足によって、体重が0.5kgとわずかしか増えていなくても、内臓脂肪は11%も増えることが調査によってわかりました。
睡眠不足によって、食欲を出すホルモンである「グレリン」がたくさん分泌されます。これにより、無意識のうちに1回の食事で300kcalも多く食べてしまうことで、内臓脂肪が増えると考えられています。
②高血圧、糖尿病などを発症
内臓脂肪が増えることで、次に高血圧や糖尿病といった生活習慣病を引き起こすリスクが高まります。内臓脂肪はさまざまな物質を分泌し、以下のような影響を及ぼします。
・動脈硬化を進行させ、血圧を上げる ・インスリンの効きを悪化させ、糖尿病を起こす ・コレステロールのバランスが悪くなる
生活習慣病やメタボリックシンドロームは、1つ発症するとほかの病気も次々と発症することが知られています。これを「メタボリックドミノ」と呼びます。不健康の「ドミノ倒し」が始まらないよう、1つ目の段階で食い止め、改善することが大切です。
③心血管疾患(心筋梗塞、脳血管疾患)を発症
いくつかの生活習慣病を発症し、動脈硬化がすすんでいくことで、最終的には心血管疾患を引き起こします。
心筋梗塞や脳梗塞、脳出血などは、命にも関わる可能性のある病気です。命が助かったとしても、後遺症が残る可能性もゼロではありません。
「忙しいのだから、睡眠不足でも仕方ない」と思って長年我慢してきたかもしれませんが、大きな病気をして体に不便が出てくる前に改善していきませんか?
適切な睡眠のためにできること
睡眠について、多くの方が勘違いしていることがあります。誤解を解消しつつ、よい睡眠をとるためのヒントとなれば幸いです。
日中に眠いのは睡眠不足のサイン
自分が睡眠不足かどうかわからない方は、「日中に眠くなることがないかどうか」を思い起こしてみてください。最近の研究によると、睡眠時間が足りていれば、つまらない会議で眠くなったり、午後の授業でぼーっとしたりすることはないのだそうです。もし眠くなっているのであれば、睡眠不足といえます。
どうしても眠たいときは、短時間の昼寝でカバーします。約20〜30分ほどがよいでしょう。それ以上眠ると深い眠りに入ってしまい、起きられなくなったり、起きた後もぼーっとしたり、夜眠れなくなったりと悪影響が大きくなります。
睡眠の質を高める取り組みも必要ですが、まずは睡眠時間をしっかり確保することが大切です。質を高めても、そもそもの時間が足りていなければ、睡眠不足であることには違いがありません。
寝溜めはできない
「平日は寝不足だけど、休日に寝溜めしているから大丈夫です」とおっしゃる方もいますが、人間は必要以上に寝ることができない生き物です。睡眠を余分にためておくことはできません。 休日に長く寝ているのは、あくまで「今現在の睡眠不足の解消のため」であって、「将来の睡眠不足に備えた睡眠の貯蓄」ではないということです。
睡眠不足が1回でも起こると、その睡眠不足をリカバリーするのに4日ほどかかるようです。ですから、休日の2日間だけでは回復できません。もし睡眠不足だと自覚があるのなら、毎日、今より30分でも長く眠るようにしましょう。
休日の睡眠には、1点注意が必要です。長く寝るとしても、睡眠中央時間(就寝時間から起床時間までの真ん中の時刻)をあまり大きくずらさないようにしてください。睡眠中央時間がズレることで「社会的時差ボケ(ソーシャルジェットラグ)」が発生し、体内時計が狂って体のだるさや疲れにつながってしまいます。
寝酒は逆効果
寝る直前に飲む「寝酒」は、睡眠の質を悪化させます。寝入りはよくなるのですが、アルコールが分解されて生じる「アセトアルデヒド」は体を覚醒させる物質のため、寝ている間に酔いが覚めるほど睡眠は浅くなります。酔って寝て、早朝にはっと目が覚めた経験のある方も多いのではないでしょうか?アルコールが分解されたせいで、中途覚醒してしまうというわけです。
お酒を一切やめる必要はありません。たとえば夕食の際にアルコールを飲んだとしたら、そのあとは水などを飲んで少し酔いをさましてから眠るようにしてみてください。
眠くなってから布団へ
眠くもないのに「もう23時だから布団へ行くか」のように、時間に縛られて行動していませんか?布団の中でずっと起きている習慣がついてしまうと、「布団に入っても寝なくてよい」と体が勘違いを起こし、余計に眠れなくなる可能性があります。
ですから、眠れないときは一度布団から出て、少し薄暗い場所でストレッチなどをしながら眠気が来るまで待ちましょう。ゲームやSNSなど、目が冴えるような行動は避けてください。
よい睡眠には準備が必要
睡眠を大事にしようと思ったら、しっかり準備することが大切です。日中の習慣を見直したり、寝室の環境を整えたりするようにしましょう。
たとえば、夕方以降はカフェインをとらない、日中にしっかり体を動かすといったことが大切です。
さらに、寝る前に多くの時間を過ごす場所の照明は少し暗くします。リビングで過ごす時間が長いのであれば、夕食後はリビングの照明を少し落としましょう。夜に強い光を浴びていると、体も脳もリラックスできません。
寝室は、静かで暗く、適温に保たれていることが大切です。室温や湿度を測定して、ご自身にとって快適に眠れる環境を探ってみてください。夏であっても、薄い掛け布団やタオルケットは使うことをおすすめします。なにもかけていないと、体温調節が難しくなり、途中で目が覚める原因となってしまいます。
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まとめ
今回は、睡眠不足が生活習慣病と関連するメカニズムをご紹介するとともに、適切な睡眠をとるためのヒントをお伝えしました。
睡眠については、誤解されていることが多いです。睡眠について正しい知識を持ち、日々の生活の中で改善に取り組んでみましょう。十分な睡眠をとることで、生活習慣病の発症や進行を少し抑えられるかもしれません。
参考
・厚生労働省e-ヘルスネット:睡眠と生活習慣病との深い関係 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-02-008.html ・保健指導リソースガイド:睡眠不足が「内臓脂肪型肥満」の引き金に睡眠を回復しても短期では元に戻らない https://tokuteikenshin-hokensidou.jp/news/2022/011226.php ・NHKアカデミア第17回<睡眠学者柳沢正史> https://www.nhk.or.jp/learning/assets/pdf/D0024300117_00000.pdf Commented [1]:https://www.nhk.jp/p/gendai/ts/R7Y6NGLJ6G/blog/bl/pkEldmVQ6R/bp/p8VjzEYoM8/ Commented [2]:13,14枚目
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